鏡で白髪を見つけたときに、つい抜いてみたくなったことはないでしょうか。SNS上では、「白髪を抜いてはいけない」「白髪を抜くと増える」という内容の情報が上がっていますが、本当なのでしょうか。白髪を抜くと、頭皮にどのような影響が生じるのでしょうか。
白髪を抜くデメリットなどについて、敏感肌専用のスキンケア商品「COCOMAYU(ココマユ)」の開発、販売を手掛けるPLAS Wam(兵庫県加古川市)社長で、美容師の嶋田純子さんに聞きました。
毛根を傷つけ癖毛の原因に
Q.そもそも、白髪が生じる原因について、教えてください。
嶋田さん「白髪の原因や白髪になるメカニズムは、はっきり解明されていない部分が多いですが、白髪には2種類あるといわれています。
1つは、色素の『メラニン』の生成活動が一時的に休止してできる『休止型』の白髪です。休止型の白髪は、病気や栄養不足、ストレスが原因で生じるといわれています。そのため、原因が解消されるとメラニンの生成が再開され、黒髪に戻る可能性がありますが、この種類の白髪は、ごくまれなケースです。
もう1つは、メラニンの生成機能が完全に失われてしまった『欠失型』の白髪で、加齢や遺伝が原因だといわれており、増えることはあっても減ることはありません。ほとんどの白髪が、この種類に該当します」
Q.SNS上では、「白髪を抜いてはいけない」「白髪を抜くと増える」という情報がありますが、本当なのでしょうか。白髪を抜くと、頭皮にどのような影響を与えるのでしょうか。
嶋田さん「白髪を抜くと毛根が傷ついてしまいます。それにより毛根の形状が変化し、次に生えてくる髪がチリチリとした癖毛になることがあります。
また、白髪が生えている毛根からは再び白髪が生えてきます。同じ毛根から生えた白髪を抜く行為を繰り返すと、傷ついた毛根から新しい髪が生えてこなくなる可能性もあります。さらに白髪を1本抜くと、抜いた白髪の周辺にある健康な髪の毛にまでダメージを与えてしまいます。
そして、白髪を抜くのが癖になると、最初は数本しか抜いていないつもりでも徐々に抜く本数が増えていき、『気付いたときには全体的に髪が少なくなっていた』ということにもなりかねません。薄毛の原因となる可能性も大いに考えられます。このほか、白髪を抜くことが原因で白髪が増えたり減ったりすることは、あり得ません。
白髪を抜くのは、絶対にやめてください。どうしても白髪が気になる場合、数本程度であれば、はさみで根元を切るのをお勧めします」
Q.白髪を黒髪に戻す方法はあるのでしょうか。
嶋田さん「白髪を黒髪に戻す方法は、今のところありません。先述のように、白髪の原因やメカニズムがはっきりと解明されておらず、特に欠失型の白髪の場合、減ることはないからです。
白髪が生じるのをできるだけ防ぐには、規則正しい生活や栄養バランスの整った食事を取り、体の老化自体を予防していくことです。これは、白髪に限らず、健やかな髪や体全体の健康を維持していくためにも大切なことです」
Q.白髪を染めたい場合、自宅で市販の白髪染めを使うのと、美容院で染めてもらうのとでは、どちらの方が髪へのダメージが少ないのでしょうか。
嶋田さん「そもそも、白髪染めなどのヘアカラー剤の主成分は、アルカリ剤です。そのため、白髪染めを使用すると、髪に一定のダメージを与えます。また、黒髪を明るい色に染める『おしゃれ染め』と呼ばれる製品に比べると、白髪染めは、白髪でもしっかり染まるようにアルカリ剤の濃度が高い傾向にあり、髪により多くのダメージを与えます。
ただし、近年、美容院で使われる白髪染めの薬剤は、ダメージをかなり抑えられる仕様となっています。また、一般的な美容院では、シャンプーの前にカラー剤とお湯を混ぜることで、髪や頭皮からカラー剤をすばやく取り除き、髪へのダメージを防ぐ『乳化』を行います。また、残留物質除去剤やリタッチ(根元染め)を活用するなど、髪へのダメージを極力抑える工夫をしています。
自宅で市販の白髪染めを使う場合、これらの作業が難しいことから、美容院で白髪を染めてもらうよりも、髪に与えるダメージが大きいと考えられます。
美容師としては、白髪を放置してストレスを感じながら生活するより、美容院でダメージを極力抑える方法で白髪を染めていただき、さらに自宅でしっかりケアをしながら、ストレスのない生活を送っていただきたいと思います」
元記事⇒オトナンサー